マッタホルンの記録です(長いよ)


私が所属している山岳会;大阪ぽっぽ会のメンバーと行ったマッタホルン登頂記
録です。

 1995年夏ヨーロッパ=マッターホルン・モンブラン=山行報告
1.メンバー(ツアーガイド)         森田博之
      (あやしいおじさん腰痛1号)   杉山豊隆
      (あやしい遠征隊隊長)      早川 俊
      (シャモニーのホームレス)    大見則親
      (あやしいおじさん改造人間2号) 伊東敏紀
      (さすらいの料理人)       山本 薫
      (かくれ泣き虫)         榎本初美
      (不良タバコ・麻薬少年)     由良博之
      (ぽっぽの裸の大将)       小寺宏司

2.行動タイムチャート
 (記号説明)  H:山小屋    A:飛行機  T:(登山)電車
         R:ロープウェイ TAXI:タクシー

8月05日(土)関空10:45−A→13:35香港23:30(雨)−A
8月06日(日)→7:05チューリッヒ8:43−T→13:47ツェルマッ
        ト1600m:ロープウェイ等下見
         (曇のち雨)
8月07日(月)ツェルマット(曇)7:50−R→9:00クラインマッター
        ホルン3884m9:30→11:35ブライトホルン4164m 
        (曇時々晴)12:00→13:35クラインマッターホルン
        13:50−R→ツェルマット(雨)
8月08日(火)ツェルマット(曇)10:00−T→ローテンボーデン→リッ
        フェルホルン2927m:岩登り→
         リッフェルベルグ−T→ツェルマット
        ツェルマット(曇)10:00−T→ゴルナーグラード−R→
        シュトックホルン3405m:ハイキング−R→
        ゴルナーグラード−T→ツェルマット
8月09日(水)ツェルマット(曇)6:30−R→7:45シュバルツゼー
        2585m8:00→10:25ヘルンリ.H.
        3260m11:45→14:00マッターホルン下見370
       0m地点→15:30ヘルンリ.H.
8月10日(木)ヘルンリ.H.(快晴)4:00→7:00ソルベイ.H.
        7:45→11:50マッターホルン頂上
        4478m12:00→18:00ソルベイ.H.→
        20:00下山路ロスト3700m地点ビバーグ(快晴)
8月11日(金)3700m地点ビバーグ(曇)4:00→7:00ヘルンリ.
        H.9:00→10:00シュバルツゼー−R→10:30
        ツェルマット14:10−T→20:00シャモニー(雨)
8月12日(土)シャモニー9:00−TAXI,R,T→10:30ニーデー
        グル10:35→13:00テートルース.H.
        3167m→15:00グーテ.H.3817m(曇時々小雨)
8月13日(日)グーテ.H.2:50(晴)→4:43ヴァロ.H.5:03
        (曇)→6:43モンブラン頂上4807m7:00
        (曇ー14゜C)→7:40ヴァロ.H.8:20(みぞれ)
        →10:00
        グーテ.H.10:45→13:00ニーデーグル(小雨)−
        T,R,B→15:00シャモニー
8月14日(月)シャモニー10:00−R→ミディ3845m→コスミック.
        H.→ミディ−R→シャモニー
8月15日(火)シャモニー5:00−TAXI→8:45チューリッヒ
        11:00−A→
8月16日(水)→6:30香港11:00−A→15:20関空

3.マッタホルン登頂記録
8月06日(日)グッと人口密度の減ったチューリッヒ空港に到着。ヨーロッパ
だー。長い飛行機の旅ですっかり日本の垢は振り払われ、気分はスイス。列車で
いざツェルマットへ。
時折雨粒の線がはしる車窓を通して山々を眺める。
 ツェルマットの駅でいきなり登山姿の外国人が「あなたどこからきましたか?」
と日本語で話しかけてきた。ぽっぽは余程外国人に縁が深いらしい。「わたしに
ほんからきました。」とその外国人。DALLEN(名古屋ECC教師)との出
会いである。

 テン場は駅のすぐ横。ちーーと勾配があって寝心地悪そうであるがぜいたくは
言うまい。ロープウェイの下見を済ませて、恐いおねーさんのCAFEで軽食を
とって、買い出しへ向かうが、今日は日曜日。スーパーMM、COOPも休み。
結局レストランでわからんメニューと格闘。
 明日の天気はどーだ?
8月07日(月)夕べの雨で気乗りしない朝を迎えたが、あすなろ山の会の東さ
んが約束通りドームを訪れてくれる。さー行こーか。今日は高度順応をかねて、
お買い得4000mのブライトホルンに登るぞ。
クラインマッターホルンまでロープウェイをとばして3884m。身支度して雪
原へとびだし、いざ4164mへ。どーもこの辺りから山に登ってる間は天気も
我々に遠慮気味に気を使ってくれるようになる。360度の眺望はないものの4
000m初体験、まあまあの出だしに一回目の”アルプス一万尺音頭”(大見振
り付け)がとびだし、ヨーロッパっ子のど肝を抜かした。
 ツェルマット近くのハイキング道横でDALLEN等に会って、ボルダリング
やって、地元の少年の登りっぷりに感心しながら雷に追われるように退散。
 雨の後、夕方顔を出したマッターホルンは、すっかり雪化粧の白粉姿であった。
夜半激しい雨。

8月08日(火)昨日より美しい真っ白のマッターちゃん。う〜んマイッタちゃ
ん。マッターホルンをあきらめてモンブランに浮気するかどうか早朝ミーティン
グするが、結局ガイド協会の助言に頼ることにする。
 初っちゃんの「マッターホルンに登りたい!」の一念が通じたか、ガイド協会
のおねーさん曰く「明日、明後日大丈夫!2時間で雪は解ける。」の助言に勇気
りんりん。DALLEN等は今日からヘルンリ.H.へ入るという。
 ツェルマット残留が決まれば今日はフリー日。由良、初美、小寺と4人でリッ
フェルホルンへ岩登りへ出かける。ここは登山電車のローテンボーデンからすぐ
のところ。
 観光客から離れて、東稜から西稜にぬけ3級の岩場で遊ぶ。はじめて触るヨー
ロッパの岩に少し緊張しながらも、楽しく高度感を味わう。ここはゴルナーグラ
ード氷河に接し、ぐるりをマッターホルン、ブライトホルンの山々に囲まれ景色
も格別。またガイドがマッターホルンの客を連れて、トレーニングする岩場でも
ある。同じようにここで遊ぶのもいいトレになるでしょう。グレードの高いルー
トも一杯あるゲレンデです。

8月09日(水)いよいよヘルンリ.H.へ。シュワルツゼーのロープウェイ駅
でいきなり現れたマッターホルンのあのくびれた頭頂部は「ほっほー、登ってく
るかね、来るなら来なさい。」と思いっきり威圧してくれ、なんとちっぽけな私
たちを不安のどん底に陥れてくれた事か。しかし、ヘルンリ.H.に近づくにつ
れ、だんだん身近になってくれてひと安心。
 下見は必須。ソルベイ.H.まで行ければ申し分ないが、とにかく14:00
まで行動することにする。
 ルートは絶えず東壁内で展開するが、左に寄りすぎてガレ場に入るとルートを
はずれている。ガレ場に入ったな、と思ったら戻って右上にルートを探してみよ
う。北壁を眺められる快調な稜線を登り、小さなルンゼを上がって、左のガレ場
に出た所で14:00。このガレ場を左上部に抜けると、しばらくしてソルベイ.
H.の下部モズレイスラブにでてソルベイ.H.が望見できるはずである。37
00m弱の地点。翌日、結局ここで道に迷いビバーグとなる。

8月10日(木)目が覚めたら3:20。ざわざわみんな行動開始で気が焦る。
トイレを済ませる間に他のパーティーはほとんど出発してしまい、大見・山本P
 早川・伊東Pが取り残される。あわてて追いかけるが初っぱなから渋滞で、な
るようになるさ、の気分。かえってこの行列ならルートミスもなかろう。しばら
くして、杉山P,愛知労山(洞川さんP)をパスして森田・小寺Pをとらえる。
もうソルベイ.H.も間近であり、モズレイスラブでは後続のために、ザイルを
フィックスする。フリーでも登れるが、やはりスタッカットで確保したい。ここ
まではノーザイル。ソルベイ.H.をはさんでこのモズレイスラブ上下各1ピッ
チが交通渋滞でソルベイ.H.では45分の時間待ち。
 ソルベイ.H.から伊東さんとアンザイレンし、極太フィックスロープがでて
くる肩部まで快調にコンテで進む。このころから頂上をきわめて下山してくるガ
イドたちとのすれ違いが始まり渋滞時間待ちに拍車がかかる。時間があっという
間にすぎていく。
 極太フィックスロープがなくなると、ピークまでは3ピッチ。由良Pと早川P
のザイルを2ピッチフィクスするが支点はなく、由良さんは岩で、早川はハーケ
ンを2本打つ。早川ザイルは残置して登頂したのだが、下山時にびっくりしたの
は、この支点に群がるように後続パーティーがぶら下がっていたこと。「おいお
い、このハーケンあまいのに抜けたらどーすんの。」あわてて、岩から支点を追
加した始末。
 さー残り1ピッチで頂上。足の方が思うように動かないが、もう頂上はすぐそ
こ。由良、小寺の待つピークへ到着すれば、そこは360度の眺望。「長かった
なー。今あの尖ったてっぺんにいるんだなー。」”アルプス一万尺音頭”を踊る
広さはないが、思ったより安定した頂上だった。
 涙チョチョギれるということはなかったが、なんか興奮別天地のうかれぽんち。
という不思議な感動であった。初ちゃんは当然ここで涙。杉山さんとの熱い抱擁
があったそうである。
 もう12時前、急いで下山しないとこの長さを明るい内に下りきれない、と気
が焦り出す。問題は上部を安全にこなすことと、ソルベイ下のルートに迷わず昨
日の下見地点までたどりつけるかどうか。
 由良、小寺、伊東3名で先に降りてもらい、早川は後続を待つ。待つこと小1
時間。急いで下山開始だが、このとき打ち合わせを行わず、しかもパーティーを
再編成せず6名一緒に下山したのがまずかった。3本のザイルが有効に回らず、
しかも懸垂で降りていくわけだが、練習不足でスムーズなリズムにのれない。加
えて他パーティーとの支点の順番待ち。肩部について、懸垂も終わり皆のいらい
らもピークに達した頃リセットボタンをおしてパーティーを再編成し、コンテに
移行した。今だから笑っていえるのだがあのときは「なにしてんねん!」と誰に
あたるでもなくアドレナリンが増加してしまった。ど〜も申し訳ない。
 さて、リセットボタンを押したものの時間までリセットされるわけでもなく、
無情にも刻々と時間はすぎてゆく。「ソルベイ小屋でひと休みする?」の声にも
’94夏の鬼川復活で「うんにゃ、休憩無し!」といわしめてまで下山したのだ
が、結局、前日下見の到達地点(3700mガレ場)で暗くなり、しかもルート
がわからなくなる。「昨日この辺りまできたんやで、左下の方に寄っていけば稜
線沿いに出るはずや」とかなりしぶとく探したけれど、結局ギブアップ。あっと
いう間に22:00になっていた。
 しかたなくビバーグとなり、今宵の寝床を選定する。6人一張りのツエルトで
平坦な所に座れて、落石の危険がなくて、自己ビレイがとれるところ。を探した
が、そんなところ在るはずもなく何とかけったいな格好で座り込む。「あ〜本当
にこんなに安定した天気でよかった。変に気負ってビバーグなんかしない!と準
備を怠ったって、やばかった。」と猛反省。
 このころヘルンリ.H.では伊東さんらと小屋の人がチロチロ動くヘッドラン
プを見て「いまごろ行動しているのは日本人ではない。あれはクレージーだ。」
と話していたそうな。ソルベイ.H.まで一緒だった人たちはヘルンリ.H.に
22時に着いたそうである。また私たち以降のパーティーや夕刻登ってきたパー
ティーはソルベイ.H.に入った。
 マッターホルンを枕に月明かりに浮かぶ氷河や山、ツェルマットの街を眺めな
がらほとんど眠られず。早朝登ってくるパーティーを道案内に下山。7:00ヘ
ルンリ.H.

8月11日(金)第一目標のマッターホルンがおわり、気も抜けてしまったが、
ともかく寝不足のからだに鞭打って列車でシャモニーへ移動。
 以下モンブラン編は省略 (以上)


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